· 

空想好きな少女

子供の頃から空想好きだった。

辛いことがあっても、寝る前に理想のワタシを空想する。

才色兼備でなんでもできるワタシ。欲しいものは全て手に入るワタシ。

 

現実逃避だったのだが、

今から考えるとイメージトレーニングには最適だったのではないかと思う。

 

子供の頃にはこうして空想が色々と助けてくれた。

 

小学校に入学する時に、母が筆記用具を揃えてくれた。

 

私は自分で選びたかったのに、選択権はなかった。

 

消しゴムは私の中で、まるでキラキラ輝く宝石や魅力的な香りがする香水のような特別なものだった。

色とりどりの組み合わせや、絵柄、香り付きのものがあったから。

 

 

クラスメートが持つ素敵な消しゴムに、私は心がひかれ

母に新しい消しゴムを買って欲しいとせがんだ。

 

「全部使ったらね」

 

そこから私の努力は始まった。

紙の上で消すだけでなく、机のお掃除を兼ねて机上を消した。

それでも減らないので、爪でほじった。

 

その後私はこの行為を反省することになり、文具を大切にし

高校生の時に使った定規は今でも使っている。

ピンクの地にハートが書いてある誠に可愛いものだが、透明性がなく誠に使いづらい。

 

さて、消しゴムは順調に小さくなり、次のものを無事迎えることができた。

 

しかし、可愛い消しゴムの物欲は次から次へと湧いてくる。

 

得意の空想を描いてみた。

それは金庫一杯に消しゴムが入っていて、「今日はどれにするかな~」と選ぶという贅沢だ。

金庫も手提げ金庫ではなく、運べない程の大きなものね。

それを考えるだけで幸せを感じていた。

 

そして、すっかり大人になった今、

もし目の前の金庫を開けて、消しゴムがパンパンに詰まっていたら

そっとその扉を閉めることだろう。

 

ツッコミどころ満載で、そもそも消しゴムを金庫に入れる必要があるのだろうか。

 

やはり金庫には、帯のついている札束に

金塊なんて入っていればさらにテンションは上がる。

 

金塊に頬ずりしてみるのはどうだろう…..

 

大人になっても空想好きは続く。